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事例1 ストレッチフィルムが再生ごみ袋となってスポーツイベント等で活躍

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2022年に世界的なスポーツイベントで観客に配布されるごみ袋に再生ごみ袋が採用されました。この再生ごみ袋が誕生するまでに、廃プラスチックは海外市場の激変にさらされるなど、紆余曲折のストーリーがありました。

亜星商事が廃プラスチックのリサイクル工場を中国に立ち上げたのが1996年。日本で廃プラスチックを有価で購入し始めましたが、その時は排出事業者もリサイクルできるのか、本当に買ってくれるのか半信半疑でした。当時の廃プラスチックは、ありとあらゆる種類を混合したまま、プレスしていたわけです。中国の工場では、フィルムなどを50人で人海戦術によって選別していました。そのときはストレッチフィルムだけをプレスしたものはありませんでした。ストレッチフィルムが分別回収され、廃プラ取引の定番になるまでは10年以上の時間がかかりました。

中国が2017年に廃プラの輸入を禁止してからは、ベトナムなどに輸出先が変化しました。そして2020年にはバーゼル法規則見直しで、混合品は輸出できなくなりました。いま、ベトナム向けでは、「ストレッチフィルム」というカテゴリーができています。排出事業者に分けてもらえれば、買えますよと地道に伝え続けてきたところ、「ストレッチフィルム」というカテゴリーが定着しました。

亜星商事は今、日本での国内循環を目標にしています。扱っているストレッチフィルムは使用期間が短く、ものによっては3時間、長くて半年です。そのため物性の劣化がなくリサイクルには適していますし、ある程度の量も集まっています。フィルム系の月間計250トンの扱い量のうち、ストレッチフィルムは150トンほどです。それを押し出し機でペレットにしています。

大阪和田化学工業が100%PCR(ポストコンシューマ)のストレッチフィルムを原料にして、再生ごみ袋を試作してみたところ、強度や厚みも問題ありませんでした。ストレッチフィルムを排出元から多く収集運搬するのが白井エコセンターです。廃棄物の排出元から集めた使用済みストレッチフィルムを亜星商事でペレット化し、それを原料にオリジナルの再生ごみ袋を作って、約500社の排出元であるお客さんに使ってもらっています。

再生ごみ袋には、バージン材にはない凸凹のようなプツプツした手触りがあります。これもひとつの商品特性です。今まで、表面平準度が少し弱いことはネガティブな要因でしたが、むしろその方がリサイクル品の表情として特性が発揮されるポジティブな要素として受け止められるようになってきています。


参考:プラジャーナル記事(2022年12月22日付け)
【再生ごみ袋】環境価値と新規用途開発を考える ストレッチ再生袋が切り開く可能性


事例2 アスクルのPB商品開発での協働、再生プラスチック原料の可能性拓く

オフィス用品通販大手のアスクルが2022年末、新PBブランド「Matakul」(マタクル)を立ち上げて、使用済みプラを原料使用した4商品の販売を開始しました。国内で販売シェアの高いクリアホルダーをオフィスなどから回収し、プラスチック使用製品の原料として再生する循環スキームを築きました。このスキームで、亜星商事は使用済みプラスチックをペレット化して、再原料化する工程を担っています。

オフィスで使用済みとなったクリアホルダーは、透明のものや色・柄ものがありますが、ポリプロピレン(PP)の単一素材で形状も一定です。これを段ボールに詰めて、宅配便で廃棄物事業者の白井エコセンターの入谷事業所(東京都足立区)へ送られます。ここで数量を集計するとともに、手作業によって透明のもの、色・柄もの、リサイクルに適さないものの3種に分別し、異物などを取り除きます。

回収量は月間3~4トンで安定しており、フレコンバック1袋あたり約300キロが溜まるごとに、亜星商事の工場に運ばれてきます。工場ではホットカット方式のペレタイザーで押出加工し、ペレット化しています。クリアホルダーは単一素材で形状が同じなので、破砕及び洗浄の工程を省けます。専門機関での物性分析と評価を受け、品質の安定性が確保された原料として出荷しています。透明クリアホルダーから造った再生ペレットは原料同様の透明に近い色味となり、色・柄ものはモスグリーンになります。このスキームでは回収量だけでなく、ペレット工程を経て再生された量も、個々の排出先企業に報告しています。

これまで亜星商事が生産する再生ペレットの用途は、ほとんどが副資材でしたが、アスクルの製品はどこのオフィスでも日常的に使われる商品であることが非常にユニークです。商品によっては、販売価格がバージン原料を使ったときよりも高くなる課題がありますが、自社が販売した使用済みプラ製品を回収して原料利用し、製品化したところに大きな前進があります。汎用品へ原料配合していくためのノウハウや協力体制も蓄積されつつあります。

欧州では、プラスチック製品に再生原料の使用が義務付けられていますが、いずれこうした流れが日本にも及ぶかも知れません。亜星商事では、再生プラスチックの商品化に向けた資源循環スキームを検討している排出元企業様からのご相談を、随時受け付けています。


参考:プラジャーナル記事(2023年2月20日付け) 【アスクル】新PB「Matakul」で使用済みクリアホルダーを製品化 実証実験から循環スキーム確立し、環境価値を訴求